調査地域は，以下に示す盛岡市内の4地域である（須田 1992）。
盛岡市内の調査地域：1. 岩手公園，2. 岩手大学構内，3. 高松公園，4. 松園ニュータウン（この地図は，建設省国土地理院長の承認を得て，同院発行の5万分の1地形図を複製したものである）。（須田裕 1992）
（１）岩手公園
岩手公園は，盛岡藩主の居城跡で1934年に市立公園として整備された。市街地のほぼ中心に位置し，海抜高度125�α宛紂ち輒明�8.7haである。ここに生育する維管束植物は栽植種，園芸植物を含めて46科175種が確認されている（村井・安本 未発表）。
（2）岩手大学構内（主として教育学部自然観察園と農学部附属植物園）
岩手大学（海抜高度134�Α砲蓮せ坡甲呂涼羶瓦�ら北西へ約2��に位置し，面積は 約42.7haである。構内には二つの緑地，すなわち教育学部自然観察園（面積 2.3ha）と農学部附属植物園（面積5ha）がある。自然観察園には維管束植物66科 182種（三浦 1986, 1987），附属植物園には137科796種（岩手大学農学部附属 植物園 1991）がそれぞれ生育する。市街地内としてはこれほど多くの植物の種 類がみられるのは非常に珍しい。
（3）高松公園
高松公園は市街地の中心から北西へ2.5��に位置し，海抜高度146�Δ旅眈召涼咫 別明冖�10.5ha）を中心にした，面積18.8ha の市立公園である。この池は，ほぼ 400年前に治水の目的で築かれた上田堤によって生じた人工の溜め池で（岩崎 1990），周囲の開発は地域有志の協力に負うところが大きい。1949年に正式に 市立公園になって以来，遊歩道，四阿，花壇等の整備が進められて来た。現在，桜 の名勝地として市民に親しまれているが，その基礎は1905年日露戦争の戦勝記念と して植えられた1000本余のソメイヨシノに負うところが大きい（岩崎 1990）。 周辺には二次林のコナラ・クリ林やアカマツ林がみられる。
（4）松園ニュータウン
市街地の中心から北へ7��，四十四ダムの東部の丘陵性の山地一帯に広がる新興住 宅地で，1970年に造成工事が開始され，1980年に完成した。面積217.9ha，人口 約一万五千人の住宅団地である。松園中央公園（海抜高度200�Α砲呂修里曚榁羆� に位置し，面積約3.6haの市立公園で，1981年に造成された。当時植栽された30余 種類の高・低木や灌木は，現在もほぼ全種類が定着している。この地域には，丘陵 地帯に造成された団地の特徴である法面や，半自然の植生をそのまま残した広い斜面が多い。調査の対象は松園中央公園を含む松園ニュータウンの約三分の二にあたる地域である。
以上の４調査地域について，1992年のみ４地域，1996年と1999年は岩手大学構内と高松公園のみ，2000年は岩手公園，岩手大学構内，高松公園の３地域を2月あるいは３月から１１月まで，咲きはじめの日（開花日），満開日および咲き終わりの日等を記録した。観察の対象とした植物は，�ー�生種，�⊆腓箸靴督躅狹�に植えれる植栽種（地域の自生種が多い），�２崔邸つ躅狹�に栽培されるいわゆる園芸種のいずれかのカテゴリーにはいる種子植物である。植栽種や園芸種を含めたのは，花暦の利用者が専門研究者よりも広範囲な対象になると考えたからである。ごく身近にみられて，必要な時に観察や採集等の教材として利用できる種子植物をとりあげている。ただし，身近な園芸種でも温室育ちの苗が本来の開花時期に先だって市販されており，開花日が早まっているもの（例：ベゴニア，マリーゴールド，サルビア）は除外した。