◎和 名  ハナショウブ  (アヤメ科)

◎学 名  Iris ensata Thunb. var. ensata (Iridaceae)

◎撮影場所・年月日  盛岡市松園  植栽  1992,7,2. 1992,7,9.

◎開花時期・開花期間

◎本種は,ノハナショウブIris ensata Thunb. var. spontanea (Makino) Nakai (図最下段:盛岡市松園 自生 1992,7,3.)から改良された園芸植物で,古くから観賞用に水辺などの湿ったところに栽培されている多年草である。原種のノハナショウブに比べて内花被片が大型になって外花被片との差がなくなり,色彩も豊富で500余の園芸品種が知られている。

◎原種のノハナショウブIris ensata Thunb. var. spontanea (Makino) Nakai は,北海道・本州・四国・九州,朝鮮半島,中国東北部,シベリア東部に分布し,山野に自生する。

◎園芸書にでてくるハナショウブをみると,水野元勝の「花壇綱目」(1681)に3品種,伊藤伊兵衛三之丞の「花壇地錦抄」(1695)に8品種,伊藤伊兵衛政武の「増補地錦抄」(1710)には32品種が記述されている。すなわち,ハナショウブは元禄のころから園芸植物として注目され,園芸品種が区別されるようになったことがわかる。しかし,ハナショウブの品種改良に最も貢献したのは,松平左金吾(1773-1850)である。実生からの選抜育種により,多数の新品種を作出したほか,「花鏡」(1845)と「花菖蒲培養録」(1849)を著した。左金吾の時代の江戸では栽培が普及し,堀切に花菖蒲園がつくられた。その影響を受けて伊勢,肥後の両地でも栽培と育種が始まり,それぞれ独自の系統を作出した。

◎明治から大正にかけて,品種改良の研究は,宮澤文吾によって神奈川県農事試験場で着手され(1910),1936年には約300の新園芸品種が発表され,現代の盛況のもとになった。

◎和名ハナショウブは花菖蒲で,花の咲くショウブ(菖蒲,サトイモ科)の意である。