◎和 名  スイレン‘アトラクション’ (スイレン科)

◎学 名  Nymphaea‘Attraction’ (Nymphaeaceae)

◎撮影場所・年月日  盛岡市上田 岩手大学農学部 附属植物園  植栽  1992,6,4.

◎開花時期・開花期間

◎スイレン属 Nymphaea L. の園芸品種改良は,耐寒性スイレンと熱帯性スイレンとでは別の道をたどってきた。先ず耐寒性スイレンについて述べる。1880-1900年になって,フランスの園芸家 N. Marliac が,「マルリアケア」と呼ばれる多数の園芸品種群を発表したのがはじまりである。交配の手法は公表されなかったが,その後,ヨーロッパに自生する N. alba L. を一方の親として,北アメリカからメキシコに分布する N. mexicana Zucc. などを交配し,実生選抜法によって多数の園芸品種を作出したものと考えられている。最も有名なのは‘Attraction’とよばれる赤花の園芸品種で,名花としてよく栽培されている。

Marliac 以後は,園芸品種改良の中心地はアメリカに移り,黄色,白色,赤色,桃色を中心に複色やぼかしなど色彩豊かになったが,青色,紫色はまだ育成されていない。

◎野生種のヒツジグサ Nymphaea tetragona Georgi は,日本のみならずヨーロッパ,シベリア,東アジア,インド北部にかけて広く分布する。日本や中国では観賞用に栽培されていたが,園芸品種の作出にはいたらなかった。

◎日本では明治末期から園芸品種が輸入されるようになり,大正年間にはマルリアケア系の園芸品種が導入された。第二次大戦後はさらに多くの園芸品種が導入されたが,組織的な園芸品種の改良は行われていない。

◎熱帯性スイレンについては,1850年に発表された‘Devonshire’という交配種N. lotus L. × N. rubra Roxb. )が最初である 。20世紀に入ると,アメリカの園芸家 G. H. Pring, M. E. Randig, および W. Tricker 達の活躍によって,多くの園芸品種が生まれた。20世紀後半も品種改良の舞台はアメリカが中心で,多くの改良家によって100を越える園芸品種が作出されている。